派遣で面接は禁止の理由

投稿日：2020年02月10日

派遣社員として働くことが決まったら、就業開始日に派遣先へ行って仕事に着手します。しかし、労働者は事前に派遣先と面接をすることはありません。実は、派遣先が事前面接をして派遣社員を特定したり選別することは法律で禁止されています。これは、労働者を守るための措置です。そこで今回は、面接禁止の理由やその代わりとされる顔合わせや職場見学について解説します。

派遣での面接禁止ルールとは

面接禁止を決めている法律

派遣社員は、労働者派遣法に基づいて業務を遂行しますが、派遣の面接禁止についても同じ法律に定められており、派遣先が派遣社員を選別して受け入れることはできません。そもそも、面接は雇用主が労働者の適性を見極める行為です。派遣社員の雇用主は派遣元となる派遣会社なので、雇用関係のない派遣先が面接をすることは禁止されています。派遣先企業が派遣社員に対してできることは、業務に関する指示や命令のみ。派遣社員への不当な搾取は法律に反します。故に、労働者派遣法は、派遣社員の権利を守るための法律と言えるでしょう。

派遣を禁止する意味と理由

面接を禁止する、派遣先から見たときの理由

派遣先が懸念すべきことは、雇用関係の曖昧さです。そもそも、派遣社員を雇用しているのは派遣元です。しかし、面接を行えば、派遣社員は派遣先にも雇用されているように見えます。もし、派遣先と派遣元で二重雇用をした場合、職業安定法に抵触する可能性が出てくるので、派遣先は何としてもそのような事態を避けなければなりません。したがって、派遣先と派遣元の立場を明確にするためにも、派遣社員を特定したり選別する目的の面接を禁止する必要があります。

面接を禁止する、派遣元から見たときの理由

万が一派遣先が面接や選考をしてしまえば、派遣元の存在意義がなくなる危険性があります。そもそも、労働者派遣事業において派遣先は、派遣元から仕事を依頼され、労働者に就労機会を与える役割を担っています。謂わば、労働者と派遣先をつなぐ架け橋です。しかし、派遣先が派遣社員を選別するとなると、それはもはや直接雇用と言えます。したがって、面接等の個人的なやりとりがあれば派遣元の立場は危うくなり、事業そのものが崩壊する可能性もあります。

面接を禁止する、派遣社員から見たときの理由

もし、面接が禁止となっていなかったら、派遣社員は派遣先でどのような対応をされるでしょうか。例えば、派遣先は若年層育成のため、より年齢の若い派遣社員を受け入れます。また、性別や容姿で合否が決まったり、履歴書等を提出させてより即戦力となる能力値の高い人を採用するでしょう。これでは、直接雇用と変わりありません。したがって、事前面接が行われると派遣社員の職業能力以外のところで選別が行われ、人によって就業機会に大きな差が生じることになります。派遣社員として仕事を安定的に行うことも難しくなるでしょう。派遣社員の保護や就業機会の平等という点で、派遣先と労働者の面接は禁止される必要があります。

派遣で面接の代わりに行われている「顔合わせ」「職場見学」とは

派遣社員がいざ派遣先で働くとなった場合、双方において就業開始までに事前準備が必要となります。そこで、面接の代わりに行われるのが顔合わせや職場見学です。顔合わせとは、就業前に派遣先と派遣社員が面談をすることで、仕事内容や出社時間等の話を直接聞くことができます。やはり、就業当日まで仕事内容を把握できないのは派遣社員にとっても不安なこと。派遣先もいざ就業当日に教えるとなると、職員の時間を大幅に割くことになります。お互いのためにも、顔合わせの時点で仕事に関する詳細を聞いておいた方が良いでしょう。

また、職場見学とは、その名のとおり就業先に出向いての実際の雰囲気を知ることで、顔合わせの後に行われることもあります。職場見学を行えば、派遣社員側も就業先で働いている社員から事前に認知してもらえるので、初日から仕事に取りかかりやすくなるでしょう。就業後のトラブルを避けるためにも、顔合わせや職場見学でお互いを知る機会を設けることは大切です。

顔合わせや職場見学は、面接とは違い労働者派遣法で禁止されていません。なぜなら、顔合わせは、派遣社員が仕事を受けるかどうか判断するために行われるもので、業務の打ち合わせが主体となるからです。また、その場には派遣先と派遣社員の他に派遣元も加わります。必要に応じて派遣元もサポートしながら話が進むので、円滑に顔合わせをすることができるでしょう。一方、決定権が派遣社員側にあるといっても、顔合わせや職場見学が面接に近い役割を担っているケースもあります。派遣社員も誠実な対応を心がけ、派遣先に自分をアピールすることが大切です。

働く前にルールを知っておくことが大切

派遣社員として働くなら、労働者派遣法に目を通しておくと自分の身を守ることにつながるでしょう。また、派遣元や派遣先、派遣社員といった派遣に関わる三者の立場を理解することも大切です。派遣の面接禁止には理由があります。どうにか回避しようとする企業もありますが、働く側として不利益を被らないようにルールをきちんと理解しておきましょう。